米国リウマチ学会(ACR)による関節リウマチ(RA)治療ガイドライン(GL)(2015年版)(文献1)の主な改訂点は,GRADEシステムを用いてGLの推奨強度を分類したことである。介入によるベネフィットがリスクを(あるいはリスクがベネフィットを)上回ることが確実な項目を「強い推奨」とし,ベネフィットとリスクのバランスが不確実あるいは患者の価値観や嗜好に左右されやすい項目を「条件つきの推奨」とした。このGLは,医師と患者が共同で薬物治療について意思決定を行う際のガイドとして活用されることを想定しており,条件つき項目は,医師と患者が十分に話し合いを行った上で,推奨とは異なる治療が行われることも許容している。
治療アルゴリズムを,発症6カ月未満のearly RAと6カ月以上のestablished RAに分類し,(1)従来型抗リウマチ薬(cDMARD)と生物学的製剤およびJAK阻害薬トファシチニブの使用法(減薬や中止も)およびtreat to target,(2)ステロイド,(3)高リスク患者(心不全やウイルス肝炎,悪性腫瘍,リンパ増殖疾患,重篤感染症)のRA治療,(4)RA治療を施行中あるいは施行開始予定患者のワクチン接種,について示されている。established RAのcDMARD単剤不応時の治療はcDMARD併用療法,生物学的製剤,JAK阻害薬の並列での推奨にとどまった。なお,バイオシミラーや,妊娠中・授乳中のRA治療などは今後の検討課題である。
1) Singh JA, et al:Arthritis Rheumatol. 2016;68(1):1-26.