心房細動の発症理論として,複数リエントリー説が信じられ,Coxらが考案したメイズ手術(文献1)が標準術式として今でも多くの施設で行われている。1998年に肺静脈からの期外収縮が発作性心房細動を起こすことが発見され(文献2),心房細動のカテーテル焼灼が爆発的に広まり,外科用高周波焼灼デバイスも開発された。
慢性心房細動の持続機序として,肺静脈と近接する左房筋が原因であることが96年に報告(文献3)されたが,広くは周知されなかった。しかし,2015年に米国で行われた多施設二重盲検試験(文献4)でも,僧帽弁疾患に合併した持続性心房細動に対する肺静脈隔離術と両心房メイズ手術の除細動率に差がないことが報告された。一方,発作性心房細動には90%近い除細動率を示す肺静脈隔離術も,慢性心房細動では60~70%の除細動率であり,慢性心房細動の持続機序は完全にはわかっていない。
左右肺静脈を標的にした心房細動手術の低侵襲化も行われている。内視鏡下に左右肺静脈を高周波焼灼して左心耳を肺切除用のリニアカッターで切除する術式(文献5)が一部施設で行われているが,内視鏡手術に習熟した術者しかできず,普及していない。左心耳閉鎖クリップの臨床使用が可能になれば,将来普及する可能性がある。
1) Cox JL, et al:J Thorac Cardiovasc Surg. 1991;101(3):406-26.
2) Haissaguerre M, et al:N Engl J Med. 1998;339(10):659-66.
3) Sueda T, et al:Ann Thorac Surg. 1996;62(6):1796-800.
4) Gillinov AM, et al:N Engl J Med. 2015;372(15):1399-409.
5) Ohtsuka T, et al:J Am Coll Cardiol. 2013;62(2):103-7.