人工心肺を使用しない冠動脈バイパス術(オフポンプCABG)が,現在わが国で主流となっている。2013年の報告では,わが国で施行された単独冠動脈バイパス術1万5000例中,9800例(65%)がオフポンプCABGであった。
03年に発表された無作為試験では,オフポンプCABGはオンポンプCABGに比して,心筋障害,輸血量が少なくてすみ,入院期間が短く,低侵襲であるという結論がなされた1)。その一方で,09年に発表された2200症例の無作為試験では,周術期の合併症,生存率,術後1年の予後には差がなかったとの結論が示された2)。
この論文に対しては,対象患者が低リスク群であり,高リスク群は除外されているという批判があったため,その後も無作為試験,メタアナリシスが行われたが,いまだ最終的な結論には至っていない。
【文献】
1) Puskas JD, et al:J Thorac Cardiovasc Surg. 2003;125(4):797–808.
2) Møller CH, et al:Circulation. 2010;121(4):498–504.
【解説】
田中裕史 神戸大学心臓血管外科・低侵襲外科特命教授