リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)は,主として妊娠可能な年齢の女性に発症し,肺の囊胞性破壊と体軸リンパ管系の異常を特徴とする緩徐進行性の多臓器疾患である。気胸を反復することが多く,肺病変の進行により労作時息切れなどの症状や呼吸不全を呈する。ラパマイシン標的蛋白質(mammalian target of rapamycin:mTOR)阻害薬であるシロリムスはLAMの呼吸機能の低下を防止する効果が報告され,2014年より保険適用薬として承認されている。
mTOR阻害薬の投与を開始すべき指標は明らかになっていないが,国際多施設共同試験であるMILES試験においては,「1秒量が予測値の70%以下であること」が参加基準となっており,この条件は有効性と安全性の1つの基準となりうる(文献1)。ただし,LAMによる呼吸機能低下の速度には個人差がみられる。さらに,国内においてシロリムスの安全性を検討した多施設共同医師主導治験(MLSTS試験)では,12カ月中間報告の評価対象者の45%において,ベースラインの1秒量が予測値の70%以上であったが,このような群においても1秒量は12カ月間安定していた。
LAM患者の呼吸機能低下の防止を考慮した場合,mTOR阻害薬は第一選択薬になりうるが,長期投与の有効性と安全性,生命予後の改善に関する知見は得られていない。各患者においての総合的な評価と予測に立った判断が求められるため,専門医への紹介が必要である。
1) McCormack FX, et al:N Engl J Med. 2011;364(17):1595-606.