【Q】
85歳,男性。咳嗽が続くため来院。胸部単純X線上,左下肺部に浸潤影があり,その一部に空洞影が認められました。喀痰検査を予定したものの,協力が得られなかったため,抗MAC(Mycobacterium avium complex)抗体を調べたところ131.4U/mLでした。
現時点で肺MAC症と診断はできないと思われますが,この値であればその可能性は高いと考えてよいでしょうか。また,一般的に抗MAC抗体値と肺MAC症の病型,重症度,治療効果,予後との関係はあるでしょうか。 (愛知県 N)
【A】
肺MAC症を疑う画像や臨床所見があり,キャピリアRMAC抗体ELISA(抗MAC抗体)が陽性であれば,肺MAC症の可能性は高いと考えられます。肺MAC症を疑って気管支鏡検査を実施し,抗MAC抗体を同時に測定した研究から,陽性適中率は95.7%,陰性適中率は81.8%との結果が得られています(文献1)。すなわち,抗MAC抗体陽性であれば,非常に高い確率で肺MAC症であると言えるということになります。この症例に関しては,抗酸菌症を示唆する空洞所見に加えて,抗MAC抗体も強陽性ですので,肺MAC症である可能性が高いと考えます。
一般的に,抗MAC抗体価は塗抹検査陽性例,CT画像で病巣が広範囲であるほど高い傾向がありますが,例外もあります(文献2)。軽症例でも,抗体価が高い症例もあれば,重症例でも,さほど上昇しない症例もあります。おそらくは,個人の免疫応答能の差によるものと考えられます。治療効果・予後と抗体価についての関連性は十分明らかになっていません。有効な化学療法や外科治療によって抗体価は低下することから,抗体価は病勢を反映すると考えられます。経時的なモニタリング指標としては有用ですが,治療前の抗体価で治療効果を予測することは難しいとされています。
1) Kitada S, et al:Chest. 2010;138(1):236-7.
2) Kitada S, et al:Int J Tuberc Lung Dis. 2015;19(1):97-103.