欧米では,血糖を連続測定できる持続血糖モニター(CGM)機器の中でも,直近の測定値が表示されるリアルタイムCGM機器が主流になっている。このリアルタイムCGMの情報を効率よく臨床にフィードバックする方法のひとつとして,リアルタイムCGM機能を装備したインスリンポンプ(SAP)が開発された。
2015年に入り,わが国でもメドトロニック社製のSAPの販売が開始され,既に数千台が使用されている。本機器の大きな特徴は,インスリンポンプの画面に現在の血糖値,上昇しているか下降しているかのトレンド,血糖値の推移が常に表示されることである。さらに,高血糖や低血糖を知らせるアラームも設定できる。これらの情報を用いて,血糖値の補正アクション(追加インスリンの注射など)を患者サイドで行えるため,血糖コントロールが劇的に改善する症例は少なくない。
1型糖尿病を対象にSAPもしくはインスリン頻回注射法(MDI)に無作為に割り付けた試験では,SAP群において1年後のHbA1cが有意に低下した1)。
今後,CGMの値を利用し,低血糖になるとインスリン注入が自動で停止するSAP機器が登場してくる予定である。また,血糖値を完全に自動コントロールするSAP機器の治験が海外で進行している。これらの機器を必要としている患者は少なくない。早期に実用化されることを強く望む。
【文献】
1) Bergenstal RM, et al:N Engl J Med. 2010;363(4):311-20.西村理明 東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授/ピッツバーグ大学公衆衛生大学院 adjunct assistant professor
【解説】
西村理明 東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授/ピッツバーグ大学公衆衛生大学院 adjunct assistant professor