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消化管疾患に対する便微生物移植療法(FMT)【再発性Clostridium difficile感染症以外でまだ十分な治療効果は証明されていない】

No.4832 (2016年12月03日発行) P.51

福井広一 (兵庫医科大学内科学消化管科准教授)

三輪洋人 (兵庫医科大学内科学消化管科主任教授)

登録日: 2016-11-30

最終更新日: 2016-11-28

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ヒトの消化管には1000種類以上の細菌が100兆個以上生息し,宿主であるヒトと共存している。近年,腸内細菌叢の構成バランスの異常(dysbiosis)が,炎症性腸疾患や過敏性腸症候群などの消化管疾患のみならず,肥満や糖尿病などの代謝性疾患,さらには自己免疫性疾患や精神・神経疾患など,様々な疾患の病態形成に関与することが明らかになり,注目されている。

腸内細菌の大部分は同定・分離されていない未知の細菌であるが,腸内細菌を含む糞便を病気の治療に用いる試みは,古くは1700年前に中国で行われていた記録がある。近代では,1958年にEisemanらが偽膜性腸炎患者に,89年にはBennetらが潰瘍性大腸炎患者に便微生物移植療法(fecal microbiota transplantation:FMT)を行って効果を得たことを報告している。特に2013年にvan Noodらは,再発性Clostridium difficile感染症に対してFMTが有効であることを無作為化比較試験で証明し,FMTがエビデンスに基づいた治療法として認められる契機となった。

現在,世界中で上述のdysbiosis関連疾患を対象にFMTの臨床試験が行われているが,再発性Clostridium difficile感染症以外でまだ十分な治療効果は証明されていない。FMTを行う上で,ドナーの選択,糞便の調整・投与法,レシピエントの準備条件など,数多くの検討・改善すべき課題が残されているが,次世代シークエンサーなどの最先端技術で得られた研究成果がFMTを飛躍的に進歩させる可能性もあり,今後の動向から目が離せない。

【解説】

1)福井広一,2)三輪洋人 兵庫医科大学内科学消化管科 1)准教授 2)主任教授

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