日本肺癌学会は診療ガイドラインに医療経済の観点を導入することも視野に、検討を進めている。12月20日、福岡市で開催された学術集会では医療経済をテーマにしたシンポジウムが組まれ、専門家らが高額薬剤の適正使用や費用対効果評価のあり方について語った。
シンポでは、がん専門医や医療経済の専門家が講演。昨年4月の財務省財政制度等審議会などで高額薬剤問題を指摘し、同問題の“震源”となった國頭英夫氏(日本赤十字社医療センター)も登壇した。
「新薬は必ず良いという思い込み」指摘
國頭氏は「医師にも新薬は必ず良いという思い込みがある」と指摘。一例として、大腸癌への効能で昨年承認されたサイラムザ(一般名:ラムシルマブ)を挙げ、「既存薬のアバスチン(ベバシズマブ)と効果・副作用の面では同等だが、薬価は約3倍。専門医がこんな薬を使い続けている現状は不思議で仕方ない。日赤医療センターの化学療法委員会では、効果・副作用が同じなら安い薬剤を選択する方針を全会一致で決定した」と述べた。
一方、「オプジーボ」(ニボルマブ)などの免疫チェックポイント阻害剤については、「投与前に奏効する患者や至適投与期間が分からない」「奏効する患者でも偽増悪が見られ、結果的に効かない患者への投与中止を簡単に決められない」との問題点を指摘。その上で、「至適な投与患者・期間を見つけるための臨床試験は新薬や標準療法の開発につながらず、何の面白みもないが、それでも絶対にやる必要がある。保険財政を“焼野原”にして、これからの超高齢社会を支える子どもたちを見捨てるのは最悪の選択だ」と訴えた。
医療者もコスト削減念頭に臨床試験を
内科系学会社会保険連合副代表の高橋和久氏(順天堂大)は、高額薬剤の薬価適正化について、「(50%引下げが決まったオプジーボのような)急激な薬価引下げは、新薬開発のモチベーションを損なう恐れがある」とした上で、「医療者がまず取り組むべきは、コスト削減を意識した医師主導臨床試験」と述べ、主要評価項目に費用対効果を入れた臨床試験の必要性を強調した。また、薬剤を含めた医療技術全体の高額化傾向にも触れ、「内保連としては、国民皆保険制度を遵守し、なるべく多くの医療技術を保険収載するよう努力すべきという姿勢は変わらない」としつつ、内保連内部でも「(安全性と有効性のみを基準とする)従来の保険収載のやり方をこのまま続けていってもよいのかという議論が巻き起こっている」と紹介した。
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