高齢運転者による交通事故が社会問題化しています。政府は防止対策を検討する関係閣僚会議を昨年11月に立ち上げ、警察庁も同様の趣旨の有識者会議を今年1月に設置しました。今回のアンケートでは、この問題に対する先生方の意見を伺いました。
今回は106人の読者にご回答いただきました。
今年3月からは75歳以上の運転免許更新時に認知機能検査で「認知症の疑いあり」と判定された場合の医師診断書提出が義務化されます。
診断書を求める高齢運転者が受診した場合、対応することは可能かを尋ねたところ(Q1)、「対応可能」が22.6%(24人)、「対応は難しい」が41.5%(44人)、「そのような患者が所属の医療機関に来ることはない」が34.9%(37人)という結果に。
「対応可能」と回答した先生からは、新たな制度に対し「認知症と診断した場合、本人が納得して免許を返納するかが問題」(愛知・内科)という指摘がありました。一方、「対応は難しい」と回答した先生からは、その理由として専門医でないことなどが挙がりました。
高齢運転者による交通事故への考え方を伺ったところ(Q2)、必要な対策として、主に①自動車の安全技術、②免許更新の仕組み、③高齢者が運転せずに生活できる環境作り─の3つの面から意見が集まりました。
①の安全技術に関しては、自動ブレーキの普及や踏み間違え防止のためのワンペダルの促進、衝突防止機能付きの車種を増やすことなどが挙がり、中でも「自動運転システムの開発が急務」(大阪・内科)と、自動運転の実用化に期待を寄せる声が多数ありました。
②の免許更新については、「法的には難しいと思うが、強制的に返納させる制度を設けるのが良い」(大阪・内科)という考え方から「一律に免許返納は望ましくない」(千葉・内科)という考え方までさまざま。高齢運転者に対し、「例えば高速道路の運転禁止など、何らかの条件を設けるべき」(香川・内科)という意見や「一定年齢以上は免許更新の間隔をさらに短くすべき」という意見が目立ちました。
77歳の先生からは自身の運転免許について「事故を起こしてしまう前に自ら免許を返納しました」(広島・外科)という体験談が寄せられました。
地方で特に重要なのが、③の高齢者を支える環境作り。「田舎では日常生活を保障するだけの『足』の確保が必要」(京都・産婦人科)という意見を多数頂戴しました。具体的には「行政がコミュニティーバスを充実させる、タクシーの割引券を発行する等の対策が必要」(山梨・耳鼻咽喉科)などの提案がありました。
3月からの制度改正には、「認知症ではないという診断書を手にするまで受診を繰り返すケースが出てくるのでは」(愛知・整形外科)、「運転を許可した医師の責任が問われないか心配」(福岡・神経内科)という懸念が寄せられています。
医師に運転技能の評価を求める仕組みに対し、「医者に『猫に鈴をつける役』を押しつけないでほしい」(新潟・精神神経科)と異議を唱える声もありました。
このほか、運転能力の低下は必ずしも認知症によるものだけではないとして、「認知・感覚・運動面を総合的に評価し運転適性を決めるシステムがほしい」(静岡・脳神経外科)という意見をいただきました。