日本産科婦人科学会は14日、「着床前遺伝子スクリーニング」(PGS、用語解説)の流産予防効果の検証に向け、特別臨床研究の対象者の仮登録を始めたことを公表した。会見した苛原稔常務理事(徳島大、写真中央)は、「PGSの有用性が分からなければ、実のある倫理的な検討には進めない。海外のデータは出てきているが、日本人のデータを得て判断したい」と述べた。
日産婦は、重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性があるなどの場合に限り、特定の遺伝子異常を診断する「着床前遺伝子診断」(PGD)を認めているが、PGSについては倫理的観点から禁止。しかし、妊娠年齢の高齢化に伴い、染色体の数的異常による体外受精の不成功例・流産が増加していることから、公開シンポジウムを開催するなどしてPGSの“解禁”に理解を求めてきた。
特別臨床研究は、無作為比較化試験(RCT)のパイロット試験として実施するもの。対象者は、満35~42歳で、①体外受精が3回以上不成功(反復体外受精・胚移植不成功例)、②原因不明習慣流産─の女性。①②ともPGS実施群40例、通常の体外受精を行う対照群10例の計50例の計画で、出生率の改善を主要評価項目とする。
解析は東京女子医大、名古屋市大、藤田保衛大などで行い、体外受精は名古屋市大、IVF大阪クリニック(東大阪市)、セント・ルカ産婦人科(大分市)などで実施する。国内のPGS研究をリードしてきた慶大は14日現在、学内の倫理委員会の承認が下りていないが、日産婦によると、承認され次第、解析・体外受精の両方の実施施設として参加する見込みだという。