SGLT2阻害薬エンパグリフロジンと,GLP-1受容体作動薬リラグルチドには,強い心血管イベント抑制効果があることを示す2つの大規模臨床試験(EMPA-REG OUTCOME試験,LEADER試験)の結果が最近報告され,注目を集めている。
SGLT2阻害薬は,腎臓でのブドウ糖再吸収阻害により血糖降下作用を発揮する。体重減少,血圧低下,脂質異常改善,尿酸値低下やインスリン抵抗性改善作用も有するため,心血管イベント抑制効果も期待されていた。心血管イベントの既往がある2型糖尿病患者にエンパグリフロジン10mgまたは25mg/日を投与したところ,平均観察期間3.1年の短期間で,プラセボに比して心血管死,総死亡が38%,32%と有意に減少した1)。
一方,心血管イベントの既往がある2型糖尿病患者にリラグルチド1.8mg/日(わが国における最大承認量は0.9mg/日)を投与したところ,平均観察期間3.8年で,プラセボに比して心血管イベントが13%減少したのみならず,心血管死,総死亡もそれぞれ22%,15%と有意に減少した2)。
2008年に米国FDAガイダンスに沿ったアウトカム試験が施行されるようになってから,心血管イベントに対する実薬の優越性も示されたのは本稿で紹介した2つの試験だけであり,糖尿病治療薬の選択に大きな影響を与えうる試験結果であった。
【文献】
1) Zinman B, et al:N Engl J Med. 2015;373(22): 2117-28.
2) Marso SP, et al:N Engl J Med.2016;375(4): 311-22.
【解説】
岡田健太 自治医科大学内分泌代謝学講師