夜間頻尿は過活動膀胱(OAB),夜間多尿,睡眠障害の3つの原因から生じている症状である
夜間頻尿の原因診断をする上で,排尿日誌は最も有効で,簡単な診断ツールである
夜間多尿や睡眠障害による夜間頻尿の原因の多くは全身疾患であり,検査や治療を進める上でも,全身の検索が必要となる症例が多い
夜間頻尿は生活の質(quality of life:QOL)を低下させる症状として最も有名なものである。しかし,その原因は多岐にわたっており,一概に泌尿器科的疾患によるものとも言えない。原因としてまず分類されているものは「膀胱蓄尿障害〔過活動膀胱(overactive bladder:OAB)など〕」「夜間多尿」「睡眠障害」の3つである(図1)。この3つにしても年齢や性別でかなり頻度は異なり,若年者では「睡眠障害」が多く,高齢者では「過活動膀胱(OAB)」が,超高齢者では「夜間多尿」が多いとされている1)。
しかし,個々の症例の原因は決して単一ではなく,2つあるいは3つの原因が混在していることも多い。一般的な診察・検査に加え,排尿日誌など(frequency volume chart:FVC,またはbladder diary)をみることにより,どの要素が中心となって症状を現しているのかを見きわめる必要がある。
日本排尿機能学会では3種類の排尿記録(図2)を紹介している2)が,排尿時刻記録(micturition time chart)は1回排尿量が不明であるため,24時間尿量や膀胱容量の推測ができず,夜間頻尿の原因診断には適していない。
排尿日誌(bladder diary)と頻度・尿量記録(FVC)は1回尿量と排尿時刻が記載されるため,昼間・夜間尿量,夜間尿量率などの計算ができ大変有用である。さらに,排尿日誌の空欄に尿意切迫感の有無や飲水量などまで記載できると,かなり高度な診断ツールとなる。また,採尿に使うカップはできれば400~500mL入る大きめのものが好ましい。当院ではおおまかな数字や目盛が高齢者でもよくわかるように工夫している(図3)。排尿日誌の記載は連日行う必要はなく,正確に記載可能な日を選んで3日程度記載し,算出するとよい。排尿日誌をつけることで,普段より水分を多く摂取する患者,反対に少なく摂取する患者がいるので注意を要する。
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