死因究明制度や医師の業務の法的位置づけ等について検討することを目的に、一般社団法人医療法務研究協会(小田原良治理事長)が設立された。協会は2月25日、都内で設立記念講演会を開催し、業務上過失致死容疑で奈良県警の取り調べを受けていた医師が勾留19日後に死亡した2010年の事案を例に、死因究明制度を充実させる重要性を議論した。
同事案は、奈良県立医大の司法解剖で死因は急性心筋梗塞と判断されたが、遺体に複数のあざがあり、遺族が岩手医大の出羽厚二教授(法医学)に解剖結果の再検証を依頼。出羽教授は、医師取り調べ中の殴打により傷害を負わせ、多臓器不全を発症したとして、昨年11月に奈良県警を刑事告発した。
講演した出羽氏は「心筋梗塞の決定的な所見はない」と指摘した上で、「鈍体による打撲→横紋筋融解症→急性腎不全→水分負荷→呼吸器不全による死亡と判断し、奈良県警は留置管理責任があり、死亡を回避できた」と主張。一方、奈良県警の主張について、「鈍体による打撲は医師があぐらをかくような座り方をしたためで、薬物か同一姿勢を長時間続けたことにより横紋筋融解症となった。急性腎不全はあったかもしれないが点滴により治った。これらとは全く関係なく心筋梗塞を発症したとしている」と紹介。その上で、遺族が遺体写真を公開していることについて触れ、「(事件を)世の中に問いたいという思い」と述べ、死因究明を願う遺族の思いを代弁した。