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死因究明制度の議論の早期再開を [お茶の水だより]

No.4847 (2017年03月18日発行) P.15

登録日: 2017-03-16

最終更新日: 2017-03-16

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▶「先生のおかげで有罪にできました」「他の権威の先生に解剖写真を見せたら、首絞めと言っているんですけどね」―。先月、死因究明制度について議論した医療法務研究協会の設立記念講演会で、千葉大と東大の法医学教授を務める岩瀬博太郎氏は、日本の法医学で日常的によく聞く警察・検察の言葉として、このような事例を紹介した。
▶日本の法医学教室に所属する医師は1〜2名(全国で150名)にとどまる。そのため同僚と議論する機会がなく、だんだん警察・検察に迎合したくなる気持ちが生まれ、公平・公正な立場を保とうとすることに大きなストレスを感じる労働環境なのだという。岩瀬氏は「鑑定結果にバラツキがあると警察・検察のストーリーが作りやすくなり、非常に危うい」とし、「複数の医師が意見を出し合い鑑定を行う制度づくりが必要」と強調する。
▶死因究明制度を巡る国の議論は現在停滞している。2012年に時限立法の死因究明等推進法が施行され、それに基づき死因究明等推進計画が閣議決定された。14年には推進法の後継として「死因究明等推進基本法案」が国会に提出されたものの衆議院解散により廃案に。診療関連死は医療事故調査制度によって死因究明が進むが、診療関連死以外については体制整備が遅れていると言える。
▶日本法医学会は法医学の定義を「医学的解明助言を必要とする法律上の事項について、科学的で公正な医学的判断を下すことで、個人の基本的人権の擁護、社会の安全、福祉の維持に寄与する」としている。法医学や死因究明の体制が脆弱であることは、国民の基本的人権の危機につながり、大きな問題だ。国においても死因究明制度の充実に向けた議論を早期に再開することを求めたい。

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