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非劣性試験の問題点─特にDPP-4阻害薬を中心として[J-CLEAR通信(75)]

No.4849 (2017年04月01日発行) P.56

名郷直樹  (武蔵国分寺公園クリニック院長/J-CLEAR理事)

登録日: 2017-03-30

最終更新日: 2017-03-28

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  • 最近の大規模臨床試験のひとつの傾向として,非劣性試験の増加がある。この試験は,新規の治療が従来の医療に対して劣っていないかを検討するものであり,直接経口抗凝固薬,糖尿病薬,喘息吸入薬などがこの方法で検討されている。
    本稿では,その中でも新しい糖尿病治療薬のひとつであるDPP-4阻害薬の臨床試験を例に,非劣性試験の問題点について考えてみたい。

    高額な新薬がプラセボと同等?

    例として取り上げるのは,2013年にNew England Journal of Medicineに掲載されたSAVOR-TIMI 53と呼ばれる臨床試験である。心血管疾患の既往があるか,もしくはそのリスクを持つHbA1c値が平均8%の治療中糖尿病患者を対象に,プラセボを対照群とし,心血管疾患をアウトカムとしてDPP-4阻害薬サキサグリプチンの効果を検討したランダム化比較試験である1)
    このように書けば,DPP-4阻害薬の追加がプラセボよりどのくらい心血管疾患を予防するかを検討した試験だと思われるかもしれない。しかし驚くべきことに,これはDPP-4阻害薬がプラセボより優れているかを検討するだけでなく,劣っていないことを検討する非劣性試験でもある。コストがかかることや副作用の危険があることを考えれば,少なくともそれらを上回る効果があるかどうかの検討が必要である。プラセボに対して劣っていないことが証明されたとしても,コストや副作用に見合う効果がなければ,臨床で使う意義はないということになる。

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