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(2)SGLT2阻害薬の可能性と潜在リスク ─糖尿病薬物治療をどのように変えるか? [特集:新薬で変わる糖尿病治療]

No.4725 (2014年11月15日発行) P.26

前川 聡 (滋賀医科大学内科学講座糖尿病・腎臓・神経内科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-17

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  • SGLT2阻害薬は,特異的にSGLT2を阻害し腎近位尿細管におけるブドウ糖再吸収を抑制し,尿糖排泄を増加させることで高血糖を是正する

    SGLT2阻害薬は,血糖低下作用のほかに,体重減少,血圧低下,脂質代謝改善作用を有し,単独投与では低血糖が少ないなどの特徴がある

    SGLT2阻害薬の副作用は,脱水,尿路・性器感染症などであり,日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」のrecommendationを参考に処方することが望ましい

    1. 腎におけるブドウ糖の再吸収機構と糖尿病

    健常人においては,血糖値100mg/dL,糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)125mL/分と仮定すると1日約180gのブドウ糖が腎糸球体から濾過され,近位尿細管に存在するナトリウム/ブドウ糖共役輸送担体(Na/glucose co-transporter:SGLT)によって,すべてのブドウ糖が再吸収される。この腎尿細管においてブドウ糖再吸収を担っているSGLTは,SGLT1とSGLT2であり,SGLT2は近位尿細管S1セグメントの上皮細胞に特異的に存在し,ブドウ糖に対してlow affinity,high capacityで,ナトリウム1分子と共役してブドウ糖を吸収し,通常ブドウ糖再吸収の約90%を担っている。
    SGLT1は,近位尿細管S3セグメントに存在し,ブドウ糖に対してhigh affinity,low capacityであり,ナトリウム2分子と共役してブドウ糖を吸収し,ブドウ糖再吸収の約10%を担っている。しかし,SGLT1は糖尿病状態などの尿糖排泄増加時やSGLT2の機能が障害された際には,より多くのブドウ糖を再吸収する高い予備能を有することが知られている。SGLT1は主に小腸に存在し,ブドウ糖やガラクトースの吸収を担っている。そのため,小腸におけるSGLT1を阻害するとブドウ糖の吸収障害により下痢などの消化器症状を起こす危険性がある1)。そのほか,SGLT1発現臓器としては心筋,骨格筋などが知られている。SGLT2は腎尿細管に特異的に存在している(図1)。
    最大ブドウ糖再吸収能力(Tmax)は,約300〜350mg/分(=約450g/日)で,血糖上昇によって濾過されるブドウ糖がTmaxを超えると尿糖が出現する。糖尿病患者では,尿糖排泄閾値が約20%上昇し,その機序として近位尿細管上皮細胞においてSGLT2やGLUT2の発現が上昇していることが知られている2)

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