国内を代表する9つのTAVIセンターによる多施設共同研究であるOCEAN-TAVIレジストリーでは30日死亡率が2.0%,1年生存率も90%と欧米以上に良好な成績が得られた
近年,TAVIデバイスの進歩に伴うTAVIの低侵襲化が加速している。今後は医療費の面からも局所麻酔下穿刺法による低侵襲TAVIが主流になっていくことが予想される
既に欧米では外科的手術ハイリスク症例のみならず比較的手術リスクの低い患者にもTAVIが施行されており,今後わが国でも適応拡大が進むものと予想される
経カテーテル大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)に関する臨床試験として,わが国で初めて行われたPREVAIL JAPAN trialによると,対象となった重症大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS)患者64例におけるデバイス留置成功率は91.9%と高率であった1)。総死亡率については,術後30日では,経大腿(transfemoral:TF)アプローチ37例では5.4%,経心尖(transapical:TA)アプローチ27例では11.1%,術後6カ月では,それぞれ5.4%,18.5%と報告されている。
この結果は,欧米のTAVI導入初期の成績と比較しても遜色のないものであり,この臨床試験により,2013年10月からわが国でもTAVI治療を保険診療として行うことが可能となった。TAVIが臨床導入された際に,患者選択のバイアスもなくなり,より実臨床に即したわが国における治療成績に注目が集まった。
筆者らは,国内施設のTAVIセンターによる多施設共同研究として,Optimized CathEter vAlvular iNtervention(OCEAN)-TAVI registryを構成して,わが国におけるTAVI治療成績を追跡した。その時点では,慶應義塾大学病院,豊橋ハートセンター,名古屋ハートセンター,帝京大学病院,仙台厚生病院,済生会横浜市東部病院,湘南鎌倉総合病院,新東京病院,小倉記念病院の9施設による参加で,2013年10月~2015年7月に施行されたTAVI治療を全例登録し,749例における治療成績の詳細を報告した。
患者の平均年齢は84.3±5.2歳(平均値±標準偏差)であり,女性66.2%,平均Society of Thoracic Surgeons(STS)スコアは8.1±7.0%(平均値±標準偏差)であった。
全症例がEdwards社のバルーン拡張型生体弁であるSAPIEN XT®を使用した手技で施行され,TFアプローチは全体の81.2%で,大半を占めていた。
緊急TAVIなどを含んだ本研究749例で,術後30日死亡率は2.0%(15例)と低率であり,その時点では,欧米諸国のTAVIに関するこれまでの治療成績を上回る結果となった(表1)。また中期予後に関しても,1年生存率は90.0%,2年生存率は83.4%と良好であり(図1),わが国におけるTAVI導入の際に懸念されていた,日本人特有の小さい体格・弁輪径という条件でも,TAVIの安全性が明示されたと考える。
また,TAVI導入初年度である2013年のわが国における単独外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)では,術後30日死亡率は2.2%であると報告されている2)。TAVIの適応は,SAVRハイリスクまたは施行困難な症例が対象であることを考慮すると,本研究でのTAVI後30日死亡率が2.0%であったことは意義深いと考える。
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