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わが国における海外からの入国前結核検診のあり方【OPINION 】

No.4851 (2017年04月15日発行) P.20

塩沢綾子 (国立国際医療研究センター国際医療協力局)

和田耕治 (国立国際医療研究センター国際医療協力局呼吸器内科)

登録日: 2017-04-14

最終更新日: 2017-04-12

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  • 背景

    近年、外国人労働者の数が増加し、2016年10月現在、約91万人が届けられ、過去最高を更新している。そのような状況において、2016年には、新宿区などで日本語学校の学生を初発とした結核の集団感染事例が確認されている。2015年においては全登録結核患者(18,280人)のうち、外国生まれの結核患者の割合は6.4%(1,164人)1)であり、増加傾向も確認されている。出身国別ではフィリピンと中国を合わせると全体の半数を占めていた。

    図1は新規登録結核患者において、年齢別に外国生まれの患者が占める割合をグラフに示したものである。若年者における外国生まれの結核患者の割合は著明に増加し、2015年は20代では50%(565/1,127人)を占めていた1)



    諸外国、特に結核の低まん延国であるオーストラリアと英国などでは、結核がまん延している国からの入国者に対しては事前にビザ取得時において結核検診を自国で受けることを義務づけている。

    それ以降、外国生まれの結核患者数は両国で減少している。オーストラリアにおいては2010年の1,353人をピークに2013年には1,106人(-18%)2)、英国においては2011年の6,287人をピークに2015年には4,087人(-35%)3)の減少となっている。

    本稿では、この2か国の入国前結核検診を管理運営する部署および関連施設の現状をもとにわが国での今後の入国前結核検診のあり方を提言する。

    オーストラリアおよび英国での取り組み

    オーストラリアの結核罹患率(人口10万人対の1年間の新登録結核患者数)は5.5 (2013年)であり、結核の低まん延国に分類される。外国生まれ結核患者の割合は88%を占めている2)

    オーストラリアにおいては、移民局が入国前結核検診を担当している。当該部署により各国に入国前結核検診を行うことが可能な医師や施設が認定されている。認定制度を用いているのは検診の質を担保するためである。eMedicalという電子カルテを用いて、インターネットを介して認定医療機関とオーストラリア移民局の医師の間で情報を共有することも可能である。入国前結核検診の対象者は、永住査証申請者全員と一部の短期滞在査証申請者(WHOの結核疫学データを移民局がリスク評価をして定めた国が対象)である。

    結核のスクリーニングとして問診(症状の有無、結核罹患歴、結核患者との接触歴など)と胸部レントゲン検査を行う。電子カルテの特性を活かして、検診を担当した医師と移民局の医師が放射線画像の読影を含めて総合判断し、画像診断以外に活動性肺結核を示唆する所見があれば、eMedical上に次に行うべき検査(喀痰検査やツベルクリン反応検査、抗原特異的インターフェロン-γ遊離検査〔IGRA〕など)が入力フォーム上に自動的に現れるようになっている。

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