特定健康診査・保健指導(いわゆるメタボ健診)が2008年度より開始された。メタボ健診が従来の健診と異なるのは,高齢者医療確保法により,すべてのデータを匿名化した上で国のナショナルデータベースに蓄積される点にある。その理由は,メタボ健診の取り組み成績によって,各医療保険者に賦課される後期高齢者医療支援金が加減算されるからである。メタボ対策は医療費を減らすから,熱心に取り組む保険者には,そうでない保険者よりも支援金を減額する,という形でインセンティブを与える仕組みである。
スタート時の基本方針は数値目標として「2008年度と比べた2012年度時点でのメタボリックシンドロームの該当者および予備群の減少率を10%以上の減少とする。なおこの目標は,中期的には2015年度末時点で2008年度当初と比べて25%以上減少という目標をふまえて設定する」としていた。では,目標は達成されたのだろうか? 特定健康診査・保健指導データからみてみよう。
特定健康診査受診者に占めるメタボリックシンドローム該当者および予備群者の割合の推移を性・年齢別に示す(表1)。一口で言って,成果は芳しくない。女性はともかく,男性はメタボ有病率が減少するどころか悪化の傾向さえみられる。
では,5年間のメタボ減少率はどれくらいだったのだろうか? 基本方針には,減少率の計算方法が詳細に記載されている。メタボ健診は40~74歳が対象だが,この年齢層の中でもさらに高齢化が進行しており,メタボ該当者・予備群者の数そのままでは比較できない。そこで,2008年度の特定健康診査受診者のメタボ出現率を性・年齢階級(5歳)に出して,2012年度の住民基本台帳人口に掛けて推計値とする。10%以上という数値目標は,この推計値の減少率である。
この方法で計算すると,メタボ減少率は1.26%と,10%以上という目標からはほど遠い結果であった(表1)。厚生労働省の公式発表では減少率は1.34%。相違の理由としては,ナショナルデータベースでは10未満の数値を公表しないルールがあるため,公表データには一部年齢不詳があり,本推計に含まれていないことが考えられる。
こうした実績をふまえ,第二期計画の基本方針では,25%減少の目標年度を2015年度から2017年度に遅らせた。しかし,最初の5年間で1%強の減少にとどまったものを,残り5年間で25%達成するのは容易ではなかろう。
服薬者の把握
特定健康診査の質問票には「血圧を下げる薬を服用していますか?」という項目がある。3種類の薬に関する質問のひとつでも「はい」と記入したら,その人はどんなにメタボでも特定保健指導対象者から外される。メタボ該当者はあまり減っていないが,年々「はい」と記入する人の割合が増加したので,特定保健指導対象者は12%も減少した。服薬者が増加していることは協会けんぽのデータでも裏づけられるが,嘘を記入してもペナルティはない。対象者数は特定保健指導の実施率の分母であり,後期高齢者支援金の算定にも用いられる数値だけに,服薬有無の把握はレセプトと突合するなど,より正確な方法が望まれる。
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