わが国で、直接経口抗凝固薬(DOAC)の臨床応用が始まってからおよそ6年。実臨床における心房細動(AF)例の脳卒中・塞栓症、あるいは大出血発生率は、ワルファリンとどれくらい異なるのだろうか。地域全例登録型の観察研究である伏見心房細動患者登録研究(伏見AFレジストリ)の成績が、19日、Circulation Journal誌に掲載された[https://goo.gl/PkbZWq]。DOAC使用はまだ270例のデータだが、中央値3年間の追跡期間中、脳卒中・塞栓症(P=0.70)、大出血(P=0.34)とも、発生率はワルファリン服用群(1728例)と有意差を認めなかった。加えて、脳卒中・塞栓症、大出血のいずれも、両群のカプランマイヤー曲線に乖離の兆候は認められなかった。
ただし観察研究ゆえ、DOAC群とワルファリン群の背景因子には有意差がある。そこで傾向スコアを用いて、年齢、他疾患合併率、CHADS2スコア、HAS-BLEDスコアなど、背景因子を揃えた538例でも比較が行われた。しかしやはり、脳卒中・塞栓症(P=0.79)、大出血(P=0.51)の発生率は、DOAC服用群とワルファリン服用群の間に有意差を認めなかった。
DOACは、ワルファリンとのランダム化比較試験4報のメタ解析において、脳卒中・塞栓症相対リスクの19%有意減少が報告されている[Lancet.2014;383(9921):955-62,https://goo.gl/d20AiY]。そのような減少が、今回、伏見AFレジストリで認められなかった原因として著者らは、「承認外低用量DOAC処方の多さ」「服薬アドヒアランス不良の影響がDOACにおいて出やすい(血中半減期が短い)」という2点が影響した可能性を挙げていた。