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ヘパプラスチンテスト(HPT)のメカニズムは?【ヒト組織由来に近いトロンボプラスチンを用いることで正常血漿との解離を小さくする】

No.4854 (2017年05月06日発行) P.62

高橋幸博 (奈良県立医科大学名誉教授/ 前奈良県立医科大学附属病院総合周産期母子医療センター新生児集中治療部教授/ 奈良県赤十字血液センター所長)

登録日: 2017-05-02

最終更新日: 2017-04-27

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  • ヘパプラスチンテスト(hepaplastin test:HPT)はPIVKA(protein induced by vitamin K absence or antagonists) Ⅱの影響は受けずⅡ・Ⅶ・Ⅹ因子欠乏を正確に検査できるとされますが,メカニズムをご教示下さい。

    (高知県 F)


    【回答】

    HPTとPIVKAおよびビタミンK依存性凝固因子のⅡ因子,Ⅶ因子,Ⅹ因子との関連についてお答えします。HPTはノルウェーのOwrenら1)が1969年に開発した検査法です。欧州ではノルモテスト(Normotest®:NT)と呼びます。

    HPTの理解には,HPTが開発されるまでの経緯が参考になります。Owren2)は,HPTの開発以前,1959年にビタミンK拮抗薬による血栓塞栓症の治療の止血モニターとしてプロトロンビン時間(PT)を改変したトロンボテスト(TT)を考案しました。PTは被検血漿中のⅤ因子およびフィブリノゲンが影響することから,TTではⅤ因子およびフィブリノゲンが一定量含まれるウシ血漿をバリウム吸着することでⅡ因子,Ⅶ因子,Ⅸ因子,Ⅹ因子のみ欠乏した血漿を検査試薬として用います。この検査試薬250μLに対し,被検血漿50μLを加え,組織トロンボプラスチンを添加し,凝固までの時間を測定します。TTもPTと同様に血液凝固までの時間が短いため,Ⅸ因子の影響は反映されないことから,TTは主にⅡ因子,Ⅶ因子,Ⅹ因子の複合凝固活性を表します。

    Owrenらはその際用いる組織トロンボプラスチンとして,ヒト由来でなく入手の容易なウシ由来の組織トロンボプラスチンを用いました。さらに凍結乾燥した試験薬として開発されたことから,TTはビタミンK拮抗薬の止血モニター法として北欧を中心に広がり,今日のわが国でも用いられています。その後,OwrenらはTT開発後もその特性を研究する中で,TTはビタミンK拮抗薬を服用した血漿と正常血漿との間に,稀釈ごとで凝固時間に解離が生じることを見出しました。

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