関節リウマチ(RA)は,全身の関節滑膜炎を主座とする自己免疫疾患であり,発症早期から不可逆的な関節破壊が進行する。代表的な炎症性サイトカインであるIL-6は,自己抗体の産生,滑膜炎症病態の誘導と遷延化,骨・軟骨破壊を介して,病態形成において中心的な役割を担う。
IL-6を発見した岸本忠三博士らは,中外製薬とともに抗IL-6受容体抗体トシリズマブを開発し,2008年に世界に先駆けてRAに対する適応を取得した。現在では世界中で使用され,高い寛解導入率とともに関節破壊を抑止し,機能障害を生じない薬剤として高く評価され,RA以外の免疫疾患にも応用されつつある。
欧米でもこの成功に追随するかのように,複数のIL-6阻害薬が開発されてきた。シルクマブは抗IL-6抗体で,受容体ではなくリガンドを阻害する。TNF阻害薬に治療抵抗性のRA患者878人に対して,プラセボ,実薬100mgを2週ごと,50mgを4週ごとの皮下注射群で比較した1)。治療開始16,24週後にプラセボに対して有意に高い臨床効果が認められ,安全性についても高い忍容性が認められた。
シルクマブ以外にも2種類のIL-6阻害薬の治験が進行・終了したが,トシリズマブを含む4薬剤間での相違は明確ではない2)。しかし,この事実はRA治療におけるIL-6標的治療の意義が確証されたことを示し,医師と患者にとって選択肢が拡大したことは好ましいことである。
【文献】
1) Aletaha D, et al:Lancet. 2017;389(10075):1206-17.
2) Tanaka Y, et al:Ann Rheum Dis. 2014;73(9): 1595-7.
【解説】
田中良哉 産業医科大学第1内科教授