前立腺特異抗原(PSA)の普及に伴い限局性前立腺癌の発見は増加しており,対する各治療方法も近年目覚ましく進歩し,充実してきている。前立腺癌の治療は男性QOLに,大きな影響を及ぼす。根治手術である前立腺全摘除術に生じる術後の尿失禁は,手術を受けた患者にとって満足度および健康関連QOLに関連する合併症であり,いまだに問題である。
Menonらにより標準化されたロボット支援腹腔鏡下の前立腺摘除術(robot-assisted radical prostatectomy:RARP)は,限局性前立腺癌の標準的治療法となった1)。わが国では2012年4月に保険収載され,それに伴いRARPが普及し,手術数は増加している。従来の手術方法である開腹手術での前立腺全摘除術や腹腔鏡下前立腺全摘除術と比べ,より細やかな手術ができ,術中の出血や組織の損傷も最小限ですむため,術後の回復が早いのが特徴とされている。
尿失禁の回復においても,従来の手術より優れているという報告が多くみられる。その理由として,RARPでは確実な膀胱尿道吻合や尿道周囲の温存が可能となり,それが術後の機能温存につながるとされている。systematic reviewでは,従来の開腹手術での前立腺全摘除術と腹腔鏡下前立腺全摘除術の両方と比較して,RARPが統計学的に有意に尿失禁の回復が早かったことが示された2)。
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