No.4858 (2017年06月03日発行) P.54
中原康雄 (東京大学リハビリテーション医学特任講師)
芳賀信彦 (東京大学リハビリテーション医学教授)
登録日: 2017-05-31
最終更新日: 2021-01-06
脳卒中により生じた麻痺症状の改善は,発症から3カ月,特に1カ月以内が最も期待できるという報告は過去に多く,一定の回復後の脳卒中リハビリテーションは,それまでの訓練効果の維持に主眼が置かれていた。
近年,回復困難とされていた脳卒中後遺症(主に上肢麻痺)に対する機能改善アプローチとして,様々な取り組みが行われている。経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)は,微弱電流により非侵襲的に大脳皮質神経細胞を刺激する方法で,脳卒中などの中枢神経障害に対して用いられる。経頭蓋磁気刺激法(TMS)は,生体に急激な変動磁場を体外から引き起こし,生体内に生じる過電流が脳内のニューロンを刺激する非侵襲的な方法で,中枢運動神経機能評価法として開発された。
反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)は刺激強度,刺激頻度,刺激回数を変化させることが可能で,低頻度では刺激部位に抑制的に,高頻度では興奮性に作用するため,刺激方法の組み合わせによって様々な中枢性疾患の治療に応用されている。脳卒中後遺症の上肢麻痺では健側大脳への低頻度rTMSと集中的作業療法の併用の有用性が報告されている1)。現在のところ臨床研究として行われているが,研究成果の蓄積により保険適用となることが望まれる。
【文献】
1) 角田 亘, 他:脳卒中. 2013;35(4):274-80.
【解説】
中原康雄*1,芳賀信彦*2 *1東京大学リハビリテーション医学特任講師 *2同教授