日本の高血圧患者の治療目標達成率は30〜40%(Miura K, et al: Circ J. 2013; 77: 2226-31.)にとどまる一方、高血圧治療に対する医師の満足度は98.9%(ヒューマンサイエンス振興財団、2016年)に上る。このギャップに強い問題意識を持ち、開業医に高血圧治療のノウハウを伝える「高血圧道場」を開く鹿児島大の大石充教授に話を聞いた。
日本で最も疾患発症に寄与している危険因子はたばこで、2位が高血圧です。さらに、高血圧に起因する疾患は、脳卒中や心不全などADLを低下させます。つまり、若い時から血圧を下げれば死亡者数が減り、医療費や介護費の増加も防ぐことができる。非常に分かりやすい話だと思うのですが、優れた降圧薬が多数あるにもかかわらず、治療目標達成率が30〜40%にとどまり、それでも医師の治療満足度は高いという状況が不思議でなりません。
高血圧になっても痛みがあるわけではないので、145〜146 mmHgでも、「ちょっと様子を見ましょうか」という診療が続いているのでしょう。
治療目標達成率を上昇させるために一番必要なのは医師の意識改革です。もう1剤増やす必要がある場合、医師が「140mmHg未満にしないと治療している意味がないよ」というくらいの言葉をかければ、治療目標を達成できるのかもしれないけど、そこまでは言わない。その理由は恐らく2つあって、1つは医師が降圧の重要性をそれほど強く感じていない場合。もう1つは、既に多剤投与の状態で患者さんが増薬を強く嫌がる場合です。
私は2012年まで阪大で難治性高血圧外来を担当していました。売りは「私が3カ月間で必ず血圧を下げます」というもので、実際にほぼ100%下げましたが、最終的には薬が増えた人よりも、減った人のほうが多かったですね。
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