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関節リウマチに対して生物学的製剤の使いわけは可能か【propensity scoreマッチにより日常診療のデータを生かすことができるか】

No.4859 (2017年06月10日発行) P.47

田中良哉 (産業医科大学第1内科教授)

登録日: 2017-06-06

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関節リウマチ(RA)の治療において生物学的製剤は革命をもたらし,すべての患者が達成すべき目標が寛解となった。わが国では,アダリムマブなど5種類のTNF阻害薬,IL-6受容体阻害薬トシリズマブ,T細胞選択的共刺激調節薬アバタセプトが注射か点滴で使用される。しかし,どのように使いわけるかについては明確な基準がなかった。

この課題に対して,欧米では生物学的製剤同士を直接比較する治験が実施された。結論は,メトトレキサート(MTX)併用下では,TNF阻害薬間,3種類の薬剤間で大差はない。しかし,治験は導入基準,除外基準で選ばれた患者をランダム化するので,実臨床の症例と異なる。

propensity score(PS)法は,多くの背景因子からロジスティック回帰分析モデルを作製して,薬剤が投与されるPSを算出し,PSがマッチする症例を2群から抽出する統計学的手法である。当科のファーストレジストリからトシリズマブ,およびアバタセプト治療群を抽出したところ,臨床効果,継続率などに有意差は得られなかった1)。ただ,機能障害が少ない症例ではトシリズマブが,血清RF値が高い症例ではアバタセプトが,有効性が高い傾向にあった。

PS法を含め統計学的手法には限界があるが,それらを用いて実臨床におけるエビデンスが構築されれば,有効性から群わけして最適医療を施すことは可能である。

【文献】

1) Kubo S, et al:Ann Rheum Dis. 2016;75(7): 1321-7.

【解説】

田中良哉 産業医科大学第1内科教授

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