酸関連疾患(acid-related diseases)と言えば,胃潰瘍や十二指腸潰瘍が中心であったが,近年の食生活の欧米化に伴う動物性蛋白質や脂質摂取量の増加あるいはH. pylori感染率の低下,アスピリンやNSAIDs服用者の増加による過酸状態に加え,高齢化や肥満,下部食道括約筋弛緩性の処方薬(カルシウム拮抗薬やニトロ製剤)などによる逆流頻度の増加により,逆流性食道炎を含む胃食道逆流症(GERD)の診療頻度が増加している。本特集では酸分泌抑制薬の歴史を個々の製剤の役割の変遷を含めて解説するとともに,酸関連疾患における治療の現状と課題についてまとめた。さらに,最近,従来のPPIの酸依存性の活性化機構における問題点を克服する形で提示された,P-CABという新しいクラスの酸分泌抑制薬の情報も解説した。
個々の患者ニーズを冷静に評価し,適切な薬剤を,適切な疾患に,適切な用量・用法で,適切な期間使用するという原則が臨床医に求められる中で,本特集が日常診療の一助になれば幸いである。
1 酸分泌抑制薬の歴史
広島大学病院消化器・代謝内科診療准教授 伊藤公訓
2 酸関連疾患治療の現状と課題
浜松医科大学医学部附属病院臨床研究管理センター病院教授 古田隆久
3 酸分泌抑制薬P-CABへの期待
慶應義塾大学医学部内科学(消化器)准教授 鈴木秀和