わが国の酸関連疾患の治療薬の中心は,PPI,H2RA,制酸薬である
PPIは現状で最も胃酸分泌抑制効果に優れており,酸関連疾患治療の第一選択薬であるが,その効果がCYP2C19の遺伝子多型の影響を受けたり,CYP450を介する薬物間相互作用を生じる問題がある
H2RAは,PPIより効果は劣るが,立ち上がりは早い。しかし,耐性をきたしやすい
制酸薬の胃酸中和効果は持続時間が短いが,粘膜保護作用があり,広く用いられている
個々の薬物の特性をよく理解して使いこなすことが肝要である
現在の酸関連疾患の治療は,プロトンポンプ阻害薬(PPI)とH2受容体拮抗薬(H2RA)が中心であり,さらに制酸薬が用いられている。かつては,抗ガストリン薬であるプログルミドや,ムスカリン受容体拮抗薬であるピレンゼピンなども胃酸分泌抑制薬として使用されていたが,現在はほとんど使用されていない。そこで,本稿では,PPI,H2RA,制酸薬の現状と課題について概説する。
PPIは,現在の酸関連疾患である,胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD),消化性潰瘍治療の第一選択薬である。H. pylori(Hp)除菌療法における補助薬でもあり,また,NSAIDs/低用量アスピリン潰瘍の二次予防としても用いられており,酸関連疾患治療に欠かせない薬物である。わが国でPPIは承認順に,オメプラゾール,ランソプラゾール,ラベプラゾール,エソメプラゾールが用いられている。海外では,pantoprazoleやtenatoprazoleも用いられている。
各種PPIの臨床効果を表1に示す。PPIの常用量を8週間投与した際の逆流性食道炎の内視鏡的治癒率はきわめて良好であり,おおよそ90%程度の治癒率が得られている1) 〜 4) 。そのため,GERD治療の第一選択薬はPPIである5)。内視鏡的に治癒した際には,維持療法が行われるが,PPIを用いた維持療法中の非再発率は80%以上で, 再発予防薬としてきわめて有効である。PPIの常用量を6週間投与した際の十二指腸潰瘍,8週間投与した際の胃潰瘍の内視鏡的治癒率は,十二指腸潰瘍で95%程度,胃潰瘍で90%程度である1) 〜 4) 。消化性潰瘍治療の第一選択薬もPPIである6)。
低用量アスピリン潰瘍治癒後のPPI投与による累積非再発率は1年で95%以上であり,プラセボよりも有意に抑制効果を認めている2)4)7)。
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