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前立腺軽度肥大におけるPSA値の短期間での変化をどう考えるか?【前立腺癌以外の影響因子が否定されれば,MRIを施行】

No.4862 (2017年07月01日発行) P.59

沖原宏冶 (京都府立医科大学北部医療センター病院教授)

登録日: 2017-06-27

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  • 64歳,男性。前立腺特異抗原(pros­tate specific antigen:PSA)の経過観察中。
    2012年:2.84ng/mL,2013年:3.04ng/mL,2014年:4.40ng/mLと基準値を超えたため,泌尿器科を紹介したところ,前立腺軽度肥大のみにてPSA経過観察の指示を受けました。2015年:5.52 ng/mLとなりましたが,2016年4月:4.39ng/mLといったん低下後,7月1日:6.08ng/mL,7月15日には6.26ng/mLと上昇。
    このように短期間に変化がある場合,慢性前立腺炎や前立腺肥大の影響と解釈してよいでしょうか。それとも,MRIや生検などを含めて,専門医に再度紹介する必要があるでしょうか。また,抗菌薬を短期間投与したあとで,再度測定することは意義があるでしょうか。

    (愛知県 N)


    【回答】

    泌尿器科医の日常外来診療の中で,短期間のPSA値の変動に患者が一喜一憂する現場をしばしば経験します。病気ではありませんが,心理的な観点から“PSA disease”と言われ,今後の指針決定にも判断に迷う場面が少なからずあります。

    ご存知のように,PSAは前立腺が産生する蛋白であり,前立腺癌細胞だけが産生したものではありません。前立腺癌の場合,前立腺癌細胞の基底細胞層が欠損し,PSAが血中に漏れやすくなり,その漏れ出た蛋白量を定量化したものです。前立腺肥大症や前立腺の炎症においても,軽度(急性炎症ではPSA値は数十まで上昇することもあります)に血中に漏れ出ることから,癌との鑑別が必要となります。

    さて,ご質問の64歳男性のPSA値の推移ですが,確かに2012年以降,緩徐に上昇しています。PSAは短期間に測定した結果でも,若干の変動(専門用語ではPSA variation)を認めます。若干の変動値のゆらぎの多くは生理的変動であり,PSA値が低値(4.0ng/mL以下)のほうが,高値(4.0~10.0ng/mL)よりも,変動割合が大きいことが報告されております。一般的に変動は平均10%と言われていますが,大きい変動の場合,20%程度になることもあります(約20%の症例で認めます)1)。

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