透析症例では,しばしばリン吸着薬が使用され,最近は多くの種類がみられます。相互作用をもたらす薬剤として,甲状腺ホルモン薬,抗菌薬,降圧薬,抗パーキンソン病薬などが併用注意となっています。その共通機序はキレート作用でしょうか。併用薬剤に何か共通の化学構造があるのでしょうか。また,実際には調べられていない薬剤の中に併用注意のものが多くあるのでしょうか。
(大阪府 I)
経口リン吸着薬は,消化管内でリン酸イオンと結合して新たな不溶物を形成することで,その消化管吸収を阻害します。薬理作用としての特徴は,リンとの結合親和性が高く,しかも結合した化合物は不溶性になります。大きく金属塩型と非金属塩型に分類されます。
その中で,金属塩型であるリン吸着薬は,消化管内で分離し,フリーの陽イオンとなり,陰イオンであるHPO4と結合して,新たな不溶性の塩を形成してリンの消化管吸収を阻害する薬剤です。生体内に存在する金属を有する金属塩型リン吸着薬で,わが国で使用可能な薬剤としては沈降炭酸カルシウム(カルタンⓇ),クエン酸第二鉄水和物(リオナⓇ)があります。一方,生体内にほとんど存在しない金属を有する金属塩型リン吸着薬には,炭酸ランタン水和物(ホスレノールⓇ)があります。もう1つの金属塩型リン吸着薬は,金属塩を骨子とした難溶性の高分子化合物である基本構造を有し,基本構造が保存され,金属塩が陽イオンとして遊離することがないまま,基本構造の表面上のイオン交換によりリンを吸着する薬剤です。わが国で使用可能なものとして,スクロオキシ水酸化鉄(ピートルⓇ)があります。
非金属塩型は,高分子レジンの表面上のイオンによってリンを吸着する薬剤です。基本構造が強固であることから,消化管から吸収されるリスクのない薬剤であり,わが国において使用可能なものとして,セベラマー塩酸塩(フォスブロックⓇ,レナジェルⓇ),ビキサロマー(キックリンⓇ)があります。
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