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CASE05 低栄養状態と甲状腺機能/体重減少と甲状腺機能低下を起こした乳児[CAUTION! 臨床検査値の落とし穴]

No.4692 (2014年03月29日発行) P.22

堀 尚明 (富士重工業健康保険組合太田記念病院小児科部長)

登録日: 2014-03-22

最終更新日: 2017-07-31

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  • 【症例紹介】

    生後11カ月の男児。在胎31週3日に緊急帝王切開で出生,出生時体重1359g。これまでの発達は正常で,生後10カ月の検診で身長および体重増加も良好であった。6週間前の体重は7490gであった。軟便が続くため離乳食を中止し,母乳栄養のみで経過観察されていた。3週間前に前医受診時,体重6890gで8%の体重減少が認められた。体重増加不良が認められたため甲状腺機能を確認したところ,FT3 2.4pg/mL,FT4 0.66ng/dL,TSH 1.1μU/mLとFT4が低値を示した。TRH負荷試験では,TSHの基礎値1.1μU/mL,頂値17.7μU/mL(90分)と遷延反応が認められた。前医は中枢性甲状腺機能低下症と判断し,甲状腺ホルモン補充療法(チラーヂン®S内服)を開始した。しかし,体重減少が続くため当院を紹介された。入院時の体重は6550gで12%の体重減少を認めた。入院時の検査所見を示す(表1)。頭部MRIで有意な異常所見なし(下垂体の低形成および下垂体柄の断裂を認めず)。


    検査値のどこに悩んだか

    FT4低値およびTRH負荷試験のTSH遷延反応から,中枢性甲状腺機能低下症も鑑別に入る。仮に中枢性甲状腺機能低下症であった場合,なぜ生後11カ月まで甲状腺機能低下症の症状が明らかにならなかったのか疑問である。さらに,中枢性(視床下部性もしくは下垂体性)の場合,TSH単独の欠損は稀である。たとえば成長ホルモン分泌不全による低血糖などを合併し得るが,本例ではそのようなエピソードは認めなかった。典型的なnon-thyroidal illness(NTI)の場合,TSHは低値~正常,かつFT3低値,FT4正常である。最重症ではFT4も低値となるが,8%の体重減少が“最重症”であるかは不明である。本例ではFT4低値を認めたことから,診断に苦慮したと推測する。

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