19歳男性。主訴:意識障害。
【現病歴・既往歴】結核性髄膜炎後,水頭症VPシャント後でADL全介助,自宅で介護されている男性。来院2カ月前まではキザミ食を介助で食べていたが,その後徐々に食事水分摂取量が低下していた。食欲低下の原因について近医で精査され,誤嚥性肺炎の可能性を疑い抗菌薬の内服を処方されたが,その後も症状は改善しなかった。来院当日の朝,朝から呼びかけに対する反応が鈍く,食事摂取不可能であったため救急要請となった。
【身体所見】意識レベル(GCS)E4V1M4,心拍数45/分,血圧83/60mmHg,呼吸数12/分,SpO2 100%(room air),体温32.8℃(直腸温)
咽頭の発赤・腫脹なし。頸部リンパ節触知せず。項部硬直なし。肺音・清。心音・整。心雑音なし。腹部圧痛なし。皮膚・褥瘡なし。
検査所見を表1に示す。
救急外来にて,担当した医師は「徐脈・ショック・低体温」の病態をみて敗血症以外に副腎不全,甲状腺機能異常を鑑別に挙げた。後者2つに関しては採血結果から否定的と考え,敗血症性ショックとして血液培養2セット,尿培養採取後に抗菌薬投与,大量輸液,保温の初療を行った。大量輸液にもかかわらず徐脈・ショックからは離脱できず,昇圧剤の持続点滴を行い内科入院となった。
診断が難しいとされる副腎不全を診断するコツは「疑うこと」だと,いたるところで言われている。救急外来の現場でコルチゾールを測定できる病院も増えており,原因不明のショックや徐脈をみたらとりあえず測定している先生も多いのではないだろうか。それでは,副腎不全を疑った次のステップとしてはコルチゾール値の測定のみでよいのだろうか。
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