無精子症は男性不妊患者の10~15%に認められ,閉塞性と非閉塞性(造精機能障害)にわけられる。非閉塞性無精子症患者の精巣内でも,部分的には精子形成が認められることがある。精巣組織の一部を切除し,そこから精子を見つけ出す方法を精巣内精子採取術(testicular sperm extraction:TESE)と言う。1999年,Schlegelから手術用顕微鏡を用いるmicro TESEの有用性が報告され,非閉塞性無精子症においてはmicro TESEが行われるのが一般的となり,その精子採取率は約50%と報告されている1)。
Y染色体長腕には精子形成に関与するAZF(azoospermia factor)遺伝子があり,非閉塞性無精子症患者の約10%でその領域の欠失(Y染色体微小欠失)が認められる。AZF領域はa,b,cに分類され,AZFa,b領域の欠失症例ではmicro TESEによる精子採取率は0%であった2)。そのため,micro TESE施行前にはAZFa,b,c領域欠失の有無を検査することが望まれるが,現在のところ保険適用はない。
AZFc領域の欠失の場合は精子採取が期待できるが,男児には遺伝するため,十分な遺伝カウンセリングが必要である。
【文献】
1) Bernie AM, et al:Fertil Steril. 2015;104(5): 1099-103.
2) Stahl PJ, et al:Fertil Steril. 2010;94(5):1753-6.
【解説】
前田俊浩*1,舛森直哉*2 *1札幌医科大学泌尿器科 *2同教授