(福島県 Y)
鍼麻酔による手術は,1958年に中国で初めて報告されました。その後,この技術は中国全土に広がりを見せ,1970年頃までには26の地域,203施設で,5万7000件を超える手術が行われていたと報告されています1)。1971年,新華社通信が鍼麻酔による手術を大々的に報じるとともに,ニューヨーク・タイムズやわが国の新聞にも同様の記事が掲載されることになります。
中でも最もセンセーショナルだったのが鍼麻酔による心臓手術でした。患者は意識のある状態で開胸手術を受け,胸が開いた状態で医師と会話もできました。意識があり自発呼吸できる状態で手術が行われたのは事実ですが,決して鍼麻酔だけで手術されたわけでないことは強調しておきます。
方法ですが,頸部,耳,額,四肢など,様々な部位の経穴が選択されています。下肢では,懸鐘(下腿外側,腓骨前方,外果尖の上3寸),陽陵泉(下腿外側,腓骨頭前下方の陥凹部),上肢では,列欠(前腕橈側,長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の間,手関節掌側横紋の上1.5寸),郄門(前腕前面,長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間,手関節横紋の上5寸)などの経穴が多く用いられました。当初は,鍼を刺入した後,上下に動かしたり,回転させたり,手動で行っていましたが,鍼を電気的につなぐ鍼通電療法へと移行していきます。痛覚を感じなくなるまで数十分~数時間,刺激し続けます。
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