関節リウマチ(RA)の疾患活動性は,関節痛,腫脹などの主観的症状に,医師の所見やCRP,赤沈を加えた複合的指標で評価される。RAでも糖尿病におけるHbA1cのように,簡便で標準化された客観的な指標が望まれてきた。
一方,バイオインフォマティクスの技法を駆使して,病態形成に関与するバイオマーカーを効率的に選択し組み合わせて,既存の複合的指標に近似するアルゴリズムの策定が試みられてきた。multi-biomarker disease activity(MBDA)は,0.2mLの血清において病態に関与する12分子(VCAM-1,EGF,VEGF-A,IL-6,TNF-RI,YKL-40,MMP-1,MMP-3,レプチン,レジスチン,SAA,CRP)を測定し,推定アルゴリズムで1~100のスコアを算出する疾患活動性評価法である1)。
国内外のコホートにおいて,MBDAスコアはDAS28などの疾患活動性の複合的指標ときわめて高い相関性を示した。また,メトトレキサートや生物学的製剤の使用による治療効果や,関節破壊の予測・反映指標として有用であることが示され,米国では日常診療でも使用されている。
MBDAスコアは,寛解導入後に生物学的製剤を減量・中止するための指標として,また,休薬後の再燃リスク予測にも有用であることが報告された。わが国では保険適用外であるが,有用性が検証されれば治療の適正な選択・継続・休薬を客観的に決定することが可能となり,医療コスト低減にも資するものと期待される。
【文献】
1) Hirata S, et al:Mod Rheumatol. 2015;25(3): 344-9.
【解説】
田中良哉 産業医科大学第1内科教授