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高齢者における心房細動の抗凝固療法【現状ではエビデンスに足るデータが不足しており,今後の治験成績の報告が待たれる】

No.4870 (2017年08月26日発行) P.54

松本直樹 (聖マリアンナ医科大学薬理学教授)

登録日: 2017-08-24

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抗凝固療法下の心房細動は,患者の高齢化により,脳梗塞より脳出血の増加率が上回る可能性がある。実際,わが国の高齢者におけるワルファリン治療時のPT-INR目標値は低めである。また同列に扱えないが,わが国では多用される,「推奨されていない低用量」直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)治療の成績も,必ずしも悪いものばかりではない(市販後調査等)。個人的にはDOACの減量,飲み忘れは脳梗塞を増やすと考えてはいるが,わが国の医師が行う「匙加減」が絶対悪とは言えない印象もあり,解釈に悩むところである。

治験に興味深いデータがある。エドキサバン60mgと30mgの群間比較試験が行われた際,それぞれに減量規定があり,減量30mgと減量15mgの4種類の患者群が存在した。減量15mg患者群では脳梗塞は減らなかった(増えた)一方,脳出血による予後悪化が非常に軽かった。減量規定患者は条件の悪い患者であり,脳出血のほうが患者の予後を左右することを示唆したデータとして興味深い。

ここから当然のように「頭蓋内出血しやすい日本人,特に高齢者ではDOACは少量投与のほうが好ましいのではないか?」「何歳まで抗凝固療法を行うのが利益を生むか?」という臨床疑問が提示された。そして現在,「通常通りの抗凝固療法を行うべきか迷う高齢者」を対象とした治験が,エドキサバン15mg投与をプラセボ対照によって実施されている。上記のmissing dataに対する回答・示唆が待たれる。

【解説】

松本直樹 聖マリアンナ医科大学薬理学教授

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