関節リウマチ(RA)は進行性関節破壊を特徴とするが,破壊された関節の機能は不可逆的であり,関節機能の再生をめざした治療法の開発が必要不可欠である。わが国ではiPS細胞を用いた再生医療が注目されるが,間葉系幹細胞も期待されている。
間葉系幹細胞は,骨芽細胞・骨細胞,軟骨細胞,筋細胞,脂肪細胞などの関節を構成する中胚葉系細胞に分化する多能性幹細胞で,顕著な自己増殖能,複製能を有する。また,骨髄や脂肪組織などからも容易に採取可能で,種々の炎症性細胞に作用して強力な免疫抑制作用を発揮し,移植拒絶反応に対して臨床応用されている。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は,炎症性サイトカインの存在下でも骨芽細胞,軟骨細胞へ分化が誘導された。また,破骨細胞の分化誘導を抑制し,制御性T細胞(Treg)を誘導して免疫抑制作用を発揮した。さらに,コラーゲン関節炎モデルラットでは,間葉系幹細胞はポリ乳酸グリコールナノファイバーをscaffold(足場)として用いることにより移植部位での局在が高まり,免疫抑制作用,関節炎制御作用,関節破壊修復作用が誘導された1)2)。
以上より,間葉系幹細胞のRAの破壊関節の局所治療ツールとしての有望性が示唆され,関節組織の再生・修復をめざした実践的展開が期待される。臨床的エビデンスの蓄積が必須であるが,scaffoldの例のように創意工夫を重ねれば,臨床開発は確実に進歩するものと期待している。
【文献】
1) Sonomoto K, et al:PLoS One. 2016;11(4): e0153231.
2) Tanaka Y:Clin Exp Rheumatol. 2015;33(4 Suppl 92):S58-62.
【解説】
田中良哉 産業医科大学第1内科教授