高齢者評価を行うことで,化学療法による有害事象のリスクを軽減できる可能性がある
国際老年腫瘍学会(SIOG)では,70歳以上の高齢者に対してスクリーニングを行うこと,さらにスクリーニングで拾い上げた患者に対して包括的高齢者評価(CGA)を行うことを推奨している
副作用発生リスクの予測ツールはその有用性が確認され,新たにNCCNガイドラインに記載された。スクリーニングツールと並び,今後の臨床応用が期待されている
高齢化が急速に進むにつれ,高齢がん患者に化学療法を行う機会は増加しているが,多くの臨床試験では高齢者(主に75歳以上)を除外している。ゆえに,高齢者がん診療ではエビデンスが乏しいまま治療をすることになり,不十分な治療や過度の有害事象を引き起こすことも多い。適切な高齢者評価により,このような有害事象のリスクを軽減できる可能性がある。
がん薬物療法の治療方針を決定する際は,患者の年齢,ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)のperformance status(PS),臓器機能などを参考にしてきたが,特に高齢者では,体力や合併症などの個体差が大きい,血清クレアチニン値や肝トランスアミナーゼ値が臓器機能を正確に反映していない,などの理由により従来の評価法だけでは治療方針の決定は困難である1)。また,若年者と異なり,高齢者の予後や治療の忍容性に関わる因子は認知機能や社会的サポートなど多岐にわたる。このような高齢者を取り巻く因子を多面的に評価することを包括的高齢者評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)と言う。
CGA構成因子の定義は様々存在するが,NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインでは,①身体機能〔日常生活動作(activities of daily living:ADL)・手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living:IADL)・機能的移動能力(functional mobility)〕,②認知機能,③精神状態,④栄養状態,⑤合併症,⑥社会的サポート,⑦多剤併用薬(5種類以上),⑧老年症候群,を構成因子と定義している。老年医学領域において,CGAは介護や特別な治療が必要とされる患者を拾い上げるための客観的な指標として広く使用されている。このような評価をもとに,ADLが低下した患者ではリハビリテーションによるADLの改善や生活の質(quality of life:QOL)の向上が図られている。
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