乾癬は特徴的な銀白色の鱗屑を伴う隆起性紅斑で,わが国での患者数は約56万人とされる。10~40%は多発性,進行性の脊椎関節炎を伴い,乾癬性関節炎と呼ばれ,治療には,これまで皮膚外用薬,紫外線照射,抗炎症薬が使用されてきた。
生物学的製剤の導入により治療法が変遷した。欧州リウマチ学会の治療アルゴリズムでは,関節破壊,炎症反応,指炎などがあれば,メトトレキサート(MTX)の速やかな開始が推奨される。次に,3~6カ月後に治療効果が不十分であれば,生物学的製剤の導入が推奨される1)。
わが国では,乾癬の病態に重要なサイトカインであるTNF,IL-17,IL-12/IL-23(p40)に対する生物学的製剤が承認されているが,それらの使いわけは不詳である。当科のファーストレジストリにおける治療抵抗性の乾癬性関節炎患者の末梢血リンパ球フェノタイプを解析したところ,ケモカイン受容体の発現によりTh1優位型,Th17優位型,両者亢進型,正常型の4群に分類された2)。Th1優位型には抗p40抗体,Th17優位型には抗IL-17抗体で治療したところ,それぞれの優位性とともに臨床症候が著明に改善した。乾癬性関節炎のように,特徴的なサイトカインが病態に関与する疾患では,末梢血のリンパ球解析により病態に合わせた生物学的製剤治療の最適化,すなわちprecision medicineの可能性が示唆された。
【文献】
1) Gossec L, et al:Ann Rheum Dis. 2016;75(3): 499-510.
2) Tanaka Y:Clin Exp Rheumatol. 2016;34(4 Suppl 98):49-52.
【解説】
田中良哉 産業医科大学第1内科教授