糖質制限食は世界的に広く認められるようになった
糖質制限食にかつて突きつけられていた問題点はほぼ解決した
糖質制限食は楽しくて続けたくなる糖尿病療養のための選択肢の1つである
2013年10月,米国糖尿病学会(American Diabetes Association:ADA)が5年ぶりに食事療法に関するガイドラインを改訂した1)。このガイドライン(以下,ADA2013)における提言の中で特に重要な改訂ポイントは以下の3つである。
①理想的な三大栄養素比率の存在を否定し,三大栄養素比率は個々の患者ごとに設定すべきものとした。
②糖尿病に対する唯一無二の食事療法の存在を否定し,様々な食事療法を受容可能とした。
③糖尿病腎症に対する蛋白制限食の意義を否定し,推奨しないとした。
この2つ目のポイントの受容可能な食事療法の一例として糖質制限食が含まれていたわけであり,ADAの糖質制限食に対するスタンスは,食事療法のガイドラインが改訂されるたびに変更されてきたことになる。
まず,2006年版(以下,ADA2006)2)までは,「糖質制限食(糖質摂取130g/日未満)は推奨されない(エビデンスレベルB)」とされていた。それが2008年版(以下,ADA2008)3)において「糖質制限食は減量のための食事療法として低脂質カロリー制限食と同様に有効である(1年まで,エビデンスレベルA)」と変更され,そして,ADA2013において「(糖質制限食を含む)様々な食事療法が受容可能である(エビデンスレベルE)」と変更された1)。何年までという年数制限や,脂質や腎機能に対する注意喚起など,ADA2008 3)に付記されていた糖質制限食の許可条件が一切除外されたのである。実際,ADA2013 1) の改訂のためになされた2012年の系統的レビュー4) においては,糖質制限食について無作為化比較試験が8件引用されており,「いずれの試験も血糖管理か脂質管理か,あるいは両方において糖質制限食が対照食よりも優れていた」とある。ただの1件として糖質制限食が劣っているという試験はなかったのである。
実は,2011年に英国糖尿病学会(Diabetes UK)が食事療法に関するガイドラインを8年ぶりに改訂していたが5),このガイドラインでも糖質制限食は体重減少や血糖管理に有効であり,選択肢にできる旨が記載されていた。このDiabetes UK 2011では,まずは三大栄養素比率よりも総カロリー摂取量に焦点を当てて,カロリー制限をすべきであるとされており,その上で,選択肢として糖質制限食を受容していた。ADA2013 1)のように糖質制限食を第一選択肢の1つとするのか,Diabetes UK 2011 5)のようにカロリー制限食を第一選択肢とした上で次の選択肢とするのかは議論が残るにしても,糖質制限食を糖尿病治療食として受容することについては世界的なコンセンサスが形成されたと言える。
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