(広島県 M)
ご質問内容を検討する前提として,まず法令の定めについて解説します。
看護師が行いうる業務は,①療養上の世話(食事,清拭・排泄の介助,患者観察等),②診療の補助,③臨時応急の手当です〔保健師助産師看護師法(以下,「保助看法」)第5条,第37条〕。
助産師が行いうる業務は,看護師業務(①~③)のほか,④助産,⑤妊婦,じょく婦もしくは新生児の保健指導,⑥へその緒を切り,浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為です(保助看法第3条,第37条)。
看護師や助産師が,ペッサリー自己着脱指導のため,ペッサリーを患者の腟内に挿入する行為(以下,「本件行為」)は,①,③~⑤には明らかに該当しないと思いますので,診療の補助(②)に含まれるか検討します。
医行為(医師の医学的判断・技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼしまたは及ぼすおそれのある行為。典型例:診療行為)を業務として行うことができるのは医師のみですが(医師の医業独占。医師法第17条),看護師・助産師は,「診療の補助」であれば業務として行うことが認められています。
ただし,あくまでも行うことができるのは補助行為であり,「診療の補助」は,医師の指示のもとで行う必要があると考えられています(保助看法第37条)。
また,医師の指示があればいかなる行為でもできるわけではなく,医行為の中でも,高度の医学的判断・技術を要するため,医師自らが必ず実施すべき医行為(絶対的医行為。例:手術における執刀など)については,医師の指示があっても,看護師・助産師は実施できません。看護師・助産師が「診療の補助」として行いうる医行為は,絶対的医行為を除いた医行為(相対的医行為)のみです。
ペッサリーには,避妊用器具として用いるペッサリーと,骨盤臓器脱(子宮脱など)の治療に用いるペッサリーとがあり,ご質問は,いずれを前提としているか,不明であるため,以下,各々について検討します。
残り1,470文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する