慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する長時間作用性気管支拡張薬を中心とした治療は,労作時息切れや咳・痰といった症状改善とともに増悪予防効果も示し,有効性は高い1)。すなわち,治療の「現在の状況の改善」および「将来のリスク低減」といった両面での高い効果が示されている。
加えて,最近COPD治療における「身体活動の向上と維持」の重要性が強調されている2)。2013年に厚生労働省が示した「運動基準・運動指針の改定に関する検討会報告書」に「日常の身体活動量を増やすことで,メタボリックシンドロームを含めた循環器疾患・糖尿病・がんといった生活習慣病の発症およびこれらを原因として死亡に至るリスクや,加齢に伴う生活機能低下をきたすリスクを下げることができる。加えて運動習慣を持つことで,これらの疾病等に対する予防効果をさらに高めることが期待できる」と記載されている3)。
COPD患者では,軽症時から既に身体活動性が低下しているとの報告は,わが国からもなされている。気管支拡張薬による労作時息切れの改善で身体活動を向上・維持することの有用性は,肺局所にとどまらず,全身性に併存症の発症・進展を遅らせ,健康寿命の延長につながる。
【文献】
1) 一ノ瀬正和:慢性閉塞性肺疾患. 内科学. 第11版. 矢㟢義雄, 総編集. 朝倉書店, 2017, p757-62.
2) 日本呼吸器学会COPDガイドライン第4版作成委員会, 編:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン. 第4版.メディカルレビュー社, 2013.
3) 宮地元彦, 他:運動基準・運動指針の改定に関する検討会報告書. 2013.
[http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002 xpqt.pdf]
【解説】
一ノ瀬正和 東北大学呼吸器内科教授