加齢とともに骨格筋量および筋力,身体能力が低下すること(サルコペニア)が心血管疾患や代謝性疾患の原因となり,寿命短縮につながることが多数報告され,注目を集めている。
サルコペニアの診断法は,いくつかのガイドラインはあるものの確立はされていない。評価項目として,筋量や筋力,身体能力が挙げられるが,いずれも正確かつ簡便に評価することが難しい。また,筋量と筋力の関係は一定ではないため,筋量と筋力・身体能力の両者を評価する必要がある。筋量の評価法にはコンピュータ断層撮影(CT)や二重エネルギーX線吸収測定法(DXA),生体インピーダンス法(RIA),身体測定法などが用いられているが,費用の問題や放射線被ばく,測定誤差などの問題もあり,対象によって選択する必要がある。
筋力や身体能力の評価はより難しく,様々な検討が行われている。握力は全身の筋力を反映し,心血管死・総死亡の予測因子であること1)2),歩行速度が心血管死の予測因子であること3),などが報告されており,現時点では握力と歩行速度が最も簡便かつ効率的な測定法と考えられているが,標準化はされていない。
全世界的に高齢化が進行する中で,サルコペニアの予防・治療は最重要課題のひとつである。早期のサルコペニア診断法の確立が望まれる。
【文献】
1) Sasaki H, et al:Am J Med. 2007;120(4):337-42.
2) Newman AB, et al:J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2006;61(1):72-7.
3) Dumurgier J, et al:BMJ. 2009;339:b4460.
【解説】
三石正憲*1,目黒 周*2,伊藤 裕*3 *1慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科 *2同専任講師 *3同教授