心臓手術中の血行動態モニタリングにおける肺動脈カテーテルの有用性については疑問視されている。患者選択や管理について標準化されていないこともあり,使用割合の施設間による差は著しい1)。
そんな中,非侵襲的な心拍出量測定方法が考案されているが,その1つである連続的動脈圧心拍出量モニターの問題点として,血行動態が不安定な患者,重度の不整脈・大動脈弁逆流の場合には精度が落ちることが挙げられ,使用にあたっては注意が必要である。
中心静脈血酸素飽和度(central venous oxygen saturation:ScvO2)の低下は酸素需給バランスの崩れを示唆するが,最近の研究結果では,心臓手術後のScvO2が正常範囲内でも,血中乳酸値が高値(≧4mmol/L)の患者では重篤な合併症の発生率が高かったこと2),心臓手術後のScvO2高値(≧80%)の患者で術後死亡率が高かったこと3),が示されており,ScvO2値の解釈には注意が必要である。
それぞれのモニタリングの特徴を理解して使用することが大切である。
【文献】
1) Chiang Y, et al:J Cardiothorac Vasc Anesth. 2015;29(1):76-81.
2) Laine GA, et al:J Cardiothorac Vasc Anesth. 2013;27(6):1271-6.
3) Balzer F, et al:Crit Care. 2015;19:168.
【解説】
安田篤史 帝京大学麻酔科講師