ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)除菌後にも胃癌は発症する。除菌時の胃粘膜の状態が,胃癌発症のリスク因子となる
除菌時に高度萎縮性胃炎(体部優勢胃炎)を有する症例では,除菌後に分化型胃癌を発症するリスクが高い
除菌後に発症する分化型胃癌では,発赤した表面陥凹型病変が典型像であり,拡大観察で胃炎様所見を伴う
除菌前の萎縮が比較的軽度(汎胃炎)の場合,除菌後に未分化型胃癌が発症することもある
2013年2月,わが国においてヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染胃炎が保険診療での除菌治療対象疾患となり,実臨床で多くの除菌治療が施行されるようになった。そのため,診療ないし検診で内視鏡検査を施行する対象として,H. pylori除菌後例の占める割合が著しく増加してきた。
内視鏡検査を実施する場合,検査の対象者が除菌後例か否かを確認することはきわめて重要である。なぜなら,除菌後に発見される胃癌には,独特の形態学的特徴があるためである。本稿では,除菌後胃癌の内視鏡所見について,分化型癌と未分化型癌にわけて解説する。
我々が以前報告した除菌後胃癌の臨床病理学的特性を表1 1)に示す。除菌後胃癌は,性別や組織型などが通常のH. pylori陽性胃癌と類似している一方,H. pylori陰性胃癌とは相違点が多い。このことは,除菌後胃癌が通常のH. pylori陽性胃癌と同様の発癌過程を有していることを示唆している。
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