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中心静脈栄養長期施行例に生じた肝機能障害の原因と対策は?【初期にはエネルギー過剰・急速増量によることが多いが,長期的には必須脂肪酸の欠乏や絶食が根本的原因】

No.4882 (2017年11月18日発行) P.65

井上善文 (大阪大学国際医工情報センター栄養ディバイス未来医工学共同研究部門特任教授)

登録日: 2017-11-21

最終更新日: 2017-11-14

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  • 長期にわたり高カロリー輸液を受けている患者の肝機能障害についてご教示下さい。当院に入院中の患者で,高齢のため,一般成人の輸液量の半分程度に当たる,ネオパレン®1号1000~1500mL/日に微量元素を追加し投与しています。ときどき発熱や腹痛あり,血液検査で胆道系酵素の上昇,白血球,CRP上昇を認めます。このようなときは,胆汁うっ滞の疑いのもと点滴内容の変更(高カロリー輸液の中止,抗菌薬投与)を行い,しばらくして症状と検査結果の改善を認めます。
    なぜ異常が起こるのでしょうか。まったく異常を認めない患者の数が多いのも事実です。対策とともにお願いします。

    (埼玉県 Y)


    【回答】

    中心静脈栄養(total parenteral nutrition:TPN)症例の肝機能障害としては,輸液開始後,早期のAST,ALT上昇がよく問題にされます。投与エネルギー量が過剰あるいは急速にエネルギー量を増やしすぎたなどが原因であることが多く,ほとんどの場合,投与量を減らして様子を観察すれば自然にAST,ALTは正常化します。投与量が適正でAST,ALTが100IU/L程度までなら,TPNを中止せずに様子を見ています。質問者はきちんと投与量を考慮しておられるようですが,投与量を計算することが重要です。筆者は30kcal/kg/日を目安にしています。

    TPN施行後,長期間経過したときの肝機能障害の原因は,ご質問のように胆汁うっ滞の場合が多いかもしれません。これは,TPNに原因があるように考えられる傾向がありますが,それは正しくありません。絶食によって生じるのであって,TPNそのものを変更する必要はありません。もちろん,TPNを中止する必要もありません。問題となるのは,消化管を使用せずにTPNを実施することで,少しでも消化管を使うことが重要です。食事摂取が可能な人なら,できるだけ食事を勧めるべきです。経管栄養が可能な場合は,少量であっても経管栄養を実施するべきです。

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