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病理組織標本でピロリ菌感染の確認はできるか?【ヘマトキシリン染色時間を長めに,エオジン染色を短めにすると認識しやすくなる】

No.4883 (2017年11月25日発行) P.60

堤 寛 (はるひ呼吸器病院病理診断科病理部長)

登録日: 2017-11-22

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  • 1960年,私の大学の同級生が29歳で胃癌で亡くなりました。場所はT大学医学部内科でした。当時,Helicobacter pylori(ピロリ菌)などまったく言及のなかった時代ですが,彼の病理組織標本(HE染色)をもらっています。油浸などすればピロリ菌感染の確認ができるものでしょうか。自身で観察できないとすれば,どのような検査所に依頼すればよろしいでしょうか。ご教示お願いします。

    (鹿児島県 H)


    【回答】

    確認できます。

    現在,臨床的にピロリ菌感染を確認する方法の1つとして,生検診断が保険収載されています。通常の胃生検標本にピロリ菌感染があるかないかは,病理医による病理診断の役割の1つと広く認識されています。
    施設によっては,ギムザ染色や抗ピロリ菌抗体を用いる免疫染色を追加して確認することも行われていますが,HE染色標本だけでも十分に感染を認識できます。弱好塩基性の桿菌あるいはらせん菌として,粘液円柱上皮に付着するか,粘液層の中に浮く形で観察されます(図1)。球菌状のcoccoid formとして顕微鏡下に現れることもあります。油浸レンズで見る必要はありません。ピロリ菌は,炎症が強い粘膜の粘液円柱上皮表面に観察されやすい傾向があります。がんや潰瘍の病変部にはピロリ菌感染はみられません。腸上皮化生の表面にもピロリ菌は認められません。化生上皮から分泌される分泌型IgAの作用でピロリ菌が排除されるためです。

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