栄養素摂取に伴う身体状況を栄養状態という。その栄養状態は大きく正常(適切な栄養状態),過栄養(栄養素が過剰な状態),低栄養(栄養素が欠乏した状態)と3つにわけることが可能である。過栄養も低栄養も正常な体の機能を維持・継続させられず,長い目で見た場合,何らかの健康障害を引き起こす。ただ,同じ栄養状態だからといって,すべての対象者が同じような健康障害を起こすとは限らない。性別,年齢による相違や環境,さらには遺伝子を背景とした個別性も存在する。
今回,高齢者における過栄養と低栄養につき2人の専門家に執筆をお願いした。高齢者と言っても年齢的には大変幅があり,画一的に論じることは難しい。前期高齢者と後期高齢者では身体的な特徴も大きく異なり,栄養に対するとらえ方も異なる。しかし,どちらの栄養状態も健康障害につながることは間違いない。特に過栄養,肥満に関しては成人とは違う視点でとらえる必要もあり,また成人とは違う健康障害のリスクになっている可能性もある。本特集が日常診療,特に高齢者医療の現場で役立つことがあれば幸いである。
1 高齢者における過栄養の問題─身体機能と認知機能の観点から
東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科 内科総括部長 荒木 厚
2 高齢者における低栄養の問題
国立長寿医療研究センター高齢者総合診療科医長/フレイル予防医学研究室長 佐竹昭介
3 高齢者における栄養管理─ギアチェンジの考え方
名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学教授 葛谷雅文