(島根県 Y)
ガストリン値の上昇は,酸分泌抑制によるpHの上昇がシグナルとなって,フィードバックによりG細胞からのガストリン分泌が亢進することで起こります。そのためガストリン値の上昇は,酸分泌抑制の強度に依存して起こります。血中ガストリン値の上昇は,H2ブロッカーの投与でも多少起こり,オメプラゾール,ランソプラゾール,ラベプラゾール,エソメプラゾールなどの従来のPPIの常用量の投与で,さらに上昇することが知られています。PPI内服時間と食事摂取のタイミングによる胃内pHの日内変動に呼応して,血中ガストリン値も日内変動することがわかっており1),採血条件により変動することにも留意すべきです。
通常,従来のPPIでは,内服開始から約2~3カ月後には正常値の2~4倍に上昇しますが,オメプラゾール,ランソプラゾール,ラベプラゾール,エソメプラゾールのいずれにおいても上昇します。しかし,血中ガストリン値の上昇は酸分泌抑制の強度によるので,PPIの代謝の遅い(高い血中濃度が持続する)poor metabolizer(PM)では,代謝が速いextensive metabolizer(EM)よりもさらに上昇するため,このCYP2C19での代謝を主とするPPIでは,PMの場合,より上昇しやすくなると考えられます。低用量アスピリン長期投与が必要な胃潰瘍・十二指腸潰瘍既往患者にランソプラゾール15mgを5~12カ月間投与すると,PMではEMより平均血中ガストリン値は高くなりましたが,EMでも最大値が3000pg/mL以上になる例や,PMでも最小値が100pg/mL以下になる例もあり,従来のPPIでも変動することがわかりました。
そういった点から,酸分泌抑制が強く効果も持続的なボノプラザンでは,承認審査時の試験データでも,平均血中ガストリン値は従来のPPIより一段高くなっており,ボノプラザン20mgでは,10mgに比してより高い血中ガストリン値を呈することがわかりました2)。
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