適応・前処置に関して,高齢者では,粗大病変や腸管狭窄などが隠れている可能性も十分考慮する
高齢者では内視鏡検査前・中・後の循環動態に関するバイタルサインのチェックを確実に行う。特にsedationの併用時は酸素飽和度(O2サチュレーション)の低下に注意する
高齢者では,抗血栓薬の休薬と脱水により,脳梗塞・心筋梗塞などの塞栓症を起こす危険性が高い
高齢者に消化管内視鏡検査を施行する場合に注意するポイントとして,心臓・血管系疾患などの併発が多い,脱水になりやすい,多くの内服薬を服用していることが多い,などが挙げられる。消化管内視鏡検査において,「高齢」はリスク因子の1つである。内視鏡検査・治療における医療事故調査では,患者サイドの要因52例中21例は高齢が原因であった1)。
適応を判断する際の注意点は以下の2点である。
①前処置である腸管洗浄液により腸管穿孔の危険性があることを考慮する。
②内視鏡検査を行う前に,粗大病変の有無,腸管狭窄チェックも含め腹部CT検査を行う。
消化管内視鏡検査は,大きく上部消化管検査と下部消化管検査にわけられる。前処置に関しては,上部消化管検査は検査当日朝の禁食のみであるが,下部消化管検査の場合は,大量の腸管洗浄液を内服する必要がある。腸管狭窄・閉塞があると腸管洗浄液が貯留して内圧が高まり,腸管虚血やイレウス,腸管穿孔をきたすリスクとなる。腸管洗浄液を処方する前に,病歴聴取,身体所見のチェックはもちろんのこと,必要に応じて腹部X線や腹部CT検査などで,粗大病変の有無を中心に腸管狭窄・閉塞がないことを確認する。
さらに検査に関する重篤な偶発症として,上部消化管では食道入口部の裂傷,下部消化管では腸管穿孔がある2)。高齢者において発症した場合には,生命に関わる可能性もあり,十分な注意を要する。
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